並行輸入のい・ろ・は

 

並行輸入ブランド品を販売する際に注意すべきことは何ですか?

ブランド品の輸入・販売行為が、いわゆる真正商品の並行輸入として商標権を侵害しないとされるための3つの条件を満たしているか確認することです。

3つの条件とはどのようなものですか?

簡単に言えば、以下の3つです。(※正確な内容については欄外参照)。

  1. 当該商品に付された商標が外国の商標権者等により適法に付されたものであること。(適法性の要件)
  2. 外国の商標権者と日本の商標権者が同一人、又は法律的、経済的に同一視できる関係にあること。(同一人性の要件)
  3. 当該商品と、日本の商標権者が扱う商品とが、品質において実質的に差異がないこと。(品質管理性の要件)

h-c-33つの条件を満たさないと、どうなるのですか?

商標権侵害となります。

商標権侵害となれば、刑事事件として取り扱われる場合があります。個人の場合、最高で10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金刑、又はこれらが併 せて科せられます。会社の業務として行っている場合、個人とは別に法人に対して3億円以下の罰金刑が科される可能性があります。

h-c-43つの条件を満たせば、販売しても問題ないのですか?

条件を満たせば、販売をしても商標権侵害にはならず、問題はありません。
3つの条件を満たさない場合はQ3のとおり商標権侵害となります。

3つの条件を満たさない具体例を教えて下さい!

以下、少し具体的に述べます。

(1) いわゆる偽造品、ニセモノの輸入・販売

「偽造品」とは、商標権者でないものが製造した物品を指します。この物品は、商品に付された商標が商標権者により適法に付されたものではないため、①適法性の要件を満たしていません。
したがって、当然、輸入・販売することは出来ません。

(2) 商標権者が異なる物品の輸入・販売

商標権はそれぞれの国で登録しなければなりません。中には、同じブランド名の商品でも、海外の商標権者と日本の商標権者が異なる場合があります。両者が同 一人と評価できない場合は、②同一人性の要件を満たしていないため、いくら海外で適法に販売されている商品であっても、これを輸入・販売すると、日本の商 標権者の商標権を侵害することになります。
したがって、この場合も、輸入・販売することは出来ません。(輸入・販売する前に、日本と海外の商標権者の確認は必須です。)

(3) いわゆる工場出しの物品の輸入・販売

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通常、ブランドの委託契約工場は製造することは許可されていますが、販売することは許可されていません。したがって、物品が同じであっても、商標権者から 委託されている工場から直接買ってしまった場合、①適法性の要件、③品質管理性の要件を満たさないとして、商標権を侵害すると指摘される場合があります。
例えば、権利者が市場に販売する前に品質コントロールを行うはずなのにそれをせずに工場が無断で販売したとするなら、商標の機能である「品質保証機能」が損なわれることになりますので、その物品は商標権侵害物品になり、輸入・販売はできないことになります。

3つの条件なんて確認したことがありません。問題ないでしょうか?

問題です。
商標権者から商標権侵害を指摘された場合、「商標権を侵害していない」ことの立証責任は、並行輸入品を販売した側にあります。購入するお客様の安心のため にも、3つの条件を満たしていることを事前に確認し、またその証拠を収集しておくことは販売者の責任です。対応を放置すれば、不測の事態を招き、結果的に 取り返しのつかない事態を招来することがあります。

具体的に何を事前確認すべきですか?

商品の販売が商標権を侵害することがないよう、事前に【ハード】と【ソフト】の確認を行なうことが必要です。

  1. h-c-7-1「ハード」とは、物品本体のことをいいます。商標権を侵害しないことを物品本体で立証するための確認作業のことを【ハードの事前確認】と呼んでい ます。具体的には正しい商品(ホンモノ)と比較して差異がないかを確認することです。したがって、ハードの確認のためには、まず、正しい商品の正確な情報 を得ることが不可欠です。
  2. h-c-7-2
    「ソフト」とは、権利者から自社までの商品の流れ(商流)のことをいいます。仕入れた商品が商標権を侵害しないことを立証するために行なう商流の 確認作業のことを【ソフトの事前確認】と呼んでいます。【ソフトの事前確認】には、インボイス、パッキングリスト、通関証明などについて、どのような書類 がどのような意味を持つかを理解し、流通の実態に合わせて確認することが必要になります。

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【ハードの確認】と【ソフトの確認】は、商品の性格ごとに確認方法が異なります。
日本流通自主管理協会(AACD)では、確認方法について詳しく知りたい方のために無料研修会を開催しております。興味のある方はAACD事務局までお問い合わせ下さい。
(電話:03-3237-6331)

確認を行なわずに商標権を侵害したらどうなるのでしょうか?

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確認を行わず、知らずに3つの条件を満たさないブランド品を販売してしまった場合でも、商標権侵害に該当し、当 然、違法行為となります。最悪の場合、警察からの摘発を受けたり、民事訴訟になり高額な賠償金(8億円の請求という事例もあります。)をブランド権利者か ら請求される場合もあります。特にインターネット物販では、販売した際の発信情報、注文の確認メール、物品の送り状等が残りますので、侵害の事実は容易に 立証されてしまいます。正確な住所が記載された購入者リストがあるわけですから、消費者救済の意味からも物品の回収や返金を求められるかもしれません。
以下に事例をご紹介します。おどかすわけではありませんが、注意を怠ると、あなたの会社や関係する人たちにとって修復できない損害を与えることにもなりかねません。細心の注意を怠らず、正しい商品を販売するように心がけてください。

【事例】

  1. h-c-8-2インターネットモールでAブランドのカバンを販売していたところ、Aブランドの商標権者から偽造品 との指摘を受けた。このことを仕入れ業者Bに連絡しようとしたが、仕入れ業者Bとはメールだけのやり取りしかなく連絡が取れない。B社あてにメールで再三 連絡しているが返信はない。
    結局、販売した商品が本物であることが証明できないために、インターネットモールから退店処分。さらに、商標権者から販売した商品200点について返金処理を迫られ、会社が存続できなくなった。
  2. インターネットモールでCブランドの衣料品を販売していたところ、Cブランドの商標権者か ら商標権ならびに不正競争防止法違反との指摘を受けた。この商品は、偽造品を販売しないといっていた仕入れ業者Eから仕入れた商品であったため、Eに連絡 をとった。Eは「万が一、偽造品だったらすべて責任をとりますから安心してください」とのことであったので、権利者へは仕入先を開示して、Eと話し合って もらうように伝えた。しばらくして、商標権者から、当社が販売していた商品が偽造品であることが確定したので、商標権侵害に対する損害賠償金を支払うよう 請求されたうえに、お客様へ販売したすべての商品を回収するよう指示があった。当社として、反論する材料がないため、多額の金銭的な損害を受けると共に、 お客様への信用を失う結果となった。

並行輸入の3要件とは

商標権者以外の者が、我が国における商標権の指定商品と同一又は類似する商品につき、その登録商標と同一又は類似する商標を付したものを輸入する行為は、 正当な権原がない限り、商標権を侵害することになります(商標法2条3項、25条、37条)。但し、判例に基づけば、以下の3つの要件(条件)が満たされ ていれば、実質的違法性を欠く(=適法)とされています。

  1. 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであること
  2. 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであること
  3. 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該物品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該物品と我が国の商標権者が登録商標を付した物品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価されること

並行輸入とは

ブランド品等には、一般的に総代理店ルートあるいは正規ルートと呼ばれている輸入総代理店などを通じた輸入ルートがありますが、これとは別の第三者による 輸入を並行輸入と言います。このほか、「輸出元の国において、商標権者によって市場に出されたブランド品を、商法権者の承諾を得ずに輸入する行為」という 言い方もできます。